決算説明会アナライザー
決算説明会の音声をアップロードするだけで、要旨のまとめ、ガイダンスの抽出、リスクの洗い出し、センチメント分析、アナリスト予想との比較を即座に得られる。

担当領域
開発をリード。音声処理のパイプライン、財務分析エンジン、センチメントのモデリング、アナリスト予想との比較機能を構築した。
期間
3か月
年
2024
技術スタック
ステータス
稼働中決算説明会の音声をアップロードするだけで、要旨のまとめ、ガイダンスの抽出、リスクの洗い出し、センチメント分析、アナリスト予想との比較を即座に得られる。
株式アナリストは1回の決算説明会に4時間以上を費やす。音声を聴き、書き起こしを読み、ガイダンスの数字を拾い、コンセンサス予想と比べ、要約を書く。四半期に500社以上が報告するなかで、大きなチームでも深く分析できるのは20〜30社にとどまり、その外側にある超過収益の機会を取りこぼしている。
説明会の音声を処理し、ガイダンスと財務指標を抽出し、アナリストのコンセンサスと比較し、経営陣のセンチメントの推移を追い、要旨をまとめるまでを一気通貫で行うパイプラインを構築した。1件あたりの分析時間は4時間から8分になった。
音声から示唆までのパイプライン
Whisper Large-v3が話者分離付きで決算音声を文字起こしし、LlamaParseが補足の10-K資料から財務表を抽出して突き合わせる。
ガイダンスの抽出
将来ガイダンス(売上、EPS、利益率)を構造化して抽出し、コンセンサス予想と自動で比較する。乖離が5%を超えるものはサプライズとして印を付ける。
センチメントの推移
文単位のセンチメントを説明会の時間軸に沿って描く。経営陣のトーンが変わる箇所が見え、翌営業日の株価の動きと相関することが多い。
複数四半期の比較
Pineconeに蓄えた過去の四半期やアナリストレポートとRAGで比較し、語り口の変化やガイダンスの推移を浮かび上がらせる。
このプロジェクトを形づくった技術選定と、それぞれを選んだ理由。
Whisper Large-v3
AI・ML金融用語の認識精度が8%高かったため、決算説明会にはDeepgramではなくWhisperを選んだ。事後に分析するためリアルタイム性は不要で、バッチ処理でも問題にならない。
Streamlit + Plotly
フロントエンド素早く作り込むために、独自のReactダッシュボードではなくStreamlitを選んだ。アナリストは見慣れたチャートの流儀を好む。Plotlyの対話的なローソク足やセンチメントのグラフは、彼らが日常的に使うBloombergの操作感に近い。
Pinecone
データ過去の決算データとアナリストレポートを保存し、複数四半期にわたるRAG比較に使うためPineconeを採用した。メタデータで絞り込めるため、「テスラのガイダンス、直近4四半期」のような問い合わせを複雑なSQLの結合なしに処理できる。
Claude 3.5 Sonnet
AI・ML数字を文脈のなかで扱えるため、財務分析にはClaudeを選んだ。GPT-4oも試したが、前年同期比と前四半期比を混同することがあり、決算分析では致命的だった。
音声の取り込みから対話的なダッシュボードまでを繋いだ、決算分析の一連の流れ。
音声処理
決算説明会の音声 → Whisper Large-v3で話者分離付きの文字起こし
書類の解析
10-K・10-QのPDF → LlamaParseで表を抽出 → 構造化された財務データへ
RAGによる文脈補完
Pineconeから過去の四半期とアナリストのコンセンサス予想を取得
分析
Claude 3.5 Sonnetがガイダンスの抽出、センチメントの採点、サプライズ検出、要旨の作成を実行
アラート
乖離が20%を超えた場合 → 購読者へSlackとメールで通知
ダッシュボード
Streamlitがセンチメントの推移、ガイダンスの比較、要旨を描画
開発中にぶつかった難所と、どう乗り越えたか。
決算説明会の話者分離
決算説明会にはCEO、CFO、アナリストなど5〜15名が登場し、質疑では発言が重なる。Whisperの標準の話者分離では25%の割合で発言者を誤り、ガイダンスをCFOではなくアナリストの発言として扱ってしまうのは許容できない。
2段構成にした。まずWhisperで全体を文字起こしし、その後に話者埋め込みモデル(pyannote)が声の特徴から区間を分ける。話者ラベルは8-Kで公表される参加者リストと突き合わせて確定する。
話者の特定精度は75%から96%へ改善した。CFOのガイダンス発言は99%の割合で正しく紐づくようになった。
コンセンサス予想の基準合わせ
アナリストの予想は形式が揃っていない。調整後EPSを出す先もGAAPベースの先もあり、株式報酬費用を含める先と除く先もある。そのまま比べると、誤ったサプライズ判定が出ていた。
文脈の手がかりから算出基準を推定し、すべての予想を共通の基準へ換算する正規化層を作った。アナリストごとの慣習は対応表として持ち、四半期ごとに更新している。
誤ったサプライズ判定は22%から4%へ下がった。ヘッジファンドの利用者からは、ようやく調整項目を正しく扱えていると評価された。

